生理生態学研究室


土谷岳令 教授 生理生態学研究室、水生植物の酸素収支 理学部3号館502号室 tsuchiya#faculty.chiba-u.jp(#→@)



水草が酸素不足にどう対応しているか

水辺の土壌中には酸素がほとんどないことが多い。その理由は、生物の呼吸による酸素の枯渇と水中での拡散係数が非常に小さいことがあげられる。そこに生育する大型植物の多く、特に葉が大気と接しいている植物は、大気中の豊富な酸素を輸送利用して、栄養塩吸収などの地下部での活動を支えている。さらに輸送された酸素の一部は土壌へ洩出して、根のまわりに薄い酸化層を形成させる。この層は嫌気的条件で生成する有害物質から植物組織を守っているばかりではなく、微生物相に影響を与え、さらにそれが植物の栄養条件に影響する。つまり、植物の嫌気的土壌への対応能力,とくに地下部への酸素供給能力や利用効率が、水辺での植物の分布を決める重要な要因であると考え、浮葉、抽水、湿生植物、さらには陸上の草本植物までも実験、調査材料として研究をすすめている。

主な研究テーマ

  1. 水生植物には体に空気ポンプを持っているものがある
  2. 酸素輸送能力と窒素栄養源の利用方法との関係は?

水生植物には体に空気ポンプを持っているものがある

嫌気的土壌に生育する水生植物は地下部に酸素を送る機構が発達している.酸素を送る機構は拡散と圧力差によるマスフローに大別できる.多くの浮葉および抽水植物では後者の機構,つまり大気→新しい葉→地下茎→古い葉や枯死した茎→大気という経路で換気と呼ばれるガスの流れがおきる.その原因は葉内外の温度および水蒸気圧差によって葉内の空気圧が上昇することである.そのためには、隔壁に気体分子の平均自由行程程度の小さな穴があり、Knusen拡散がおこる必要がある。多くの種の葉で気孔開度と圧力差は負の相関があることから、気孔が散在する皮層がその隔壁に相当すると考えている。

酸素輸送能力と窒素栄養源の利用方法との関係は?

水生植物の中にもヨシやガマのようにマスフローによる酸素輸送能力を持つもの、マコモやヒシのように酸素輸送を拡散のみに依存しているものがある。前者は大きな地下部で同化コストのかかる硝酸イオンも吸収する傾向がある。一方、後者は蓄積すると有害だが同化コストの小さいアンモニウムイオンを主に吸収し、小さな根、つまり少ない酸素供給量で生活する傾向があることが判明した。

最近の研究業績

原著論文

  1. Nakamura, M, T Nakamura, T Tsuchiya and K Noguchi (2012) Functional linkage between N acquisition strategies and aeration capacities of hydrophytes for efficient oxygen consumption in roots. Physiologia Plantarum 147: 135-146.
  2. Nakamura, M, T Nakamura and T Tsuchiya (2010) Advantages of NH4+ on growth, nitrogen uptake and root respiration of Phragmites australis. Plant and Soil 331:463-470.
  3. Inoue, T M and T Tsuchiya (2009) Depth distribution of Typha orientalis Presl in an artificial Pond. Plant Species Biology 24:47-52.
  4. Matsui, T and T Tsuchiya (2006) Root aerobic respiration and growth characteristics of three Typha species in response to hypoxia. Ecological Research 21:470-475
  5. Matsui, T and T Tsuchiya (2006) A method to estimate practical radial oxygen loss of wetland plant roots. Plant and Soil 279:119-128.
  6. Inoue, T M. and T Tsuchiya (2006) Growth strategy of an emergent macrophyte, Typha orientalis Presl, in comparison with Typha latifolia L. and Typha angustifolia L. Limnology 7:171-174.
  7. Yamamoto, K., K Shimada, K Ito, S Hamada, A Ishijima, T Tsuchiya and M Tazawa (2006) Chara myosin and the energy of cytoplasmic streaming. Plant and Cell Physiology 47:1427-1431
  8. Hirota, M and T Tsuchiya (2004) Indirect method to estimate convective gas flow through culms of a Phragmites australis stand. Limnology 4:149-153.
  9. Horiuchi, E and Tsuchiya, T (1999) Effects of emergent plants on gas emission from soil surface in water. Japanese Journal of Limnology 60:291-297
  10. Yamamoto, I, Ikusima, I and Tsuchiya, T (1999) Relationship between net photosynthetic rate and leaf life-span of submerged plants. Japanese Journal of Limnology 60:257-263.

総説

  1. Tsuchiya, T (1991) Leaf life span of floating-leaved plants. Vegetatio 97:149-160.

書籍

  1. 土谷岳令(2016)湿地の植物の代表種 ヨシ.「図説 日本の湿地」日本湿地学会(監修) 朝倉書店 p.70-71.
  2. 土谷岳令(2016)通気組織.「植物学の百科事典」日本植物学会(編)丸善出版p.532-533.
  3. 土谷岳令(2001)地球環境における湿地の役割「ハイベスト教科辞典 植物の世界」 西田 誠 他(監修)学習研究社 p.120-122
  4. 土谷岳令(2001)水辺植生.生活形と生態.「千葉県の自然誌 千葉県の植生2」千葉県史料研究財団(編)千葉県 p.424-429.

学生へのメッセージ

意外な経験が研究、特に生態学には役立つことがあります。若いころの農作業や樹木の剪定や趣味だった電子工作などです。