生物学科・生物学コース概要


学科・コース長挨拶

令和2年度の幕開けは新型コロナウィルスの世界的感染流行と重なりました。緊急事態宣言のもと社会・経済活動が大幅に制限され,千葉大学においては前期のすべて授業がメディア授業(オンライン授業)となりました。生物学科の皆様は授業・課外活動が制限され,とても不自由な生活を強いられていると思います。このような混乱状況においても自分自身と世界の未来を見据えて,自律的に勉学に励むようお願いします。

大学における生物学の勉強・研究の取り組み方について少し述べさせていただきます。生物学とは「生命と生物の仕組みの不思議を解き明かす学問」です。その「研究対象」は動物,植物,微生物,そしてウィルスと多様です。また,「研究分野」も多様です。遺伝子レベルから生命を解き明かそうとする分子生物学,細胞レベルから機能解明を目指す細胞生物学,タンパク質の機能から生命原理を解き明かそうとする生化学,発生現象から生命の神秘に迫る発生生物学,地球上の多様な生物生態を明らかにしようとする生態学,そして多様な生物の成り立ちについて時間軸を遡って解明しようとする進化系統学など多くの研究分野があります。それぞれの研究分野はさらに細分化され,それとともに近年の生物学研究はより深遠なものになっています。一方,分野の細分化により「木を見て森を見ず」となり,重箱の隅をつつくような研究に陥る可能性もあります。

生命の深遠な秘密を解き明かすような研究を行うためには,どのような態度で研究に臨めばよいのでしょうか?それは簡単に答えられるような問題ではありませんが,偉業を成し遂げた先達の生物学者がヒントになります。オートファジーの仕組みの解明により2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅先生の偉大な発見は,誰もが使っている顕微鏡を用いての液胞観察が発端でした。iPS細胞の開発により2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞した山中先生の研究はES細胞の遺伝子発現情報が発端となりましたが,その情報はwebで公開され誰もが入手できるものでした。このように,偉大な発見は,当時のどの研究者でも手に入る装置,情報から出発しました。しかし,同じ現象をみても,同じ情報に触れても,ノーベル賞を受賞した両先生は「問題意識が非常に明確であった」ために偉大な発見へと繋がったのです。1989年に日本で最初のノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川先生も「大切なことは問題を見つける能力,それをあきらめずに解決する能力,それ自体を楽しめる能力,そして,柔軟性」と,問題を見つける能力の重要性を指摘しています。生物学の進歩とともに生命現象の多くはわかってきましたが,まだまだわかっていないことも多いです。混沌とした生命現象に対して,「ある明確な問題設定」をすることは生物学研究のスタートだけではなく,研究にとって最も重要なことといっても過言ではありません。なぜなら,「問題設定のレベルの高さ」が「研究のレベル」を決めるからです。

生物・生命にはまだまだ多くの未知の機能・機構があります。その解明は純粋なサイエンスの発展だけでなく,人類の未来社会の発展にも大きく寄与すると期待されています。未来の生物学を担う皆様には,生物学には大きな使命・可能性があることを留意し,「生物学における重要な未解決問題は何なのか」と常に意識して,生物学の勉強・研究に励んでいってください。