群集生態学研究室


村上正志 教授 群集生態学、群集の創出維持機構と生態機能 自然科学系総合研究棟1 409号室 muramasa#faculty.chiba-u.jp(#→@) 個人ページ
高橋佑磨 助教 進化集団生物学、生態学、遺伝的多様性の進化過程と生態的機能 自然科学系総合研究棟1 406号室 takahashi.yum#chiba-u.jp(#→@) 個人ページ
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生物の多様性の進化とその機能を解き明かす

生物の最大の特徴は「多様性」です。地球上には数え切れないほど多様な種が存在すると同時に、それぞれの種の中には個体差が存在しています。このような多様性が進化の長い歴史の中で、あるいは最近の気候変動や人間活動によってどのように成立・変遷してきたかを明らかにすることは、生態学や進化生物学の主要なテーマです。本研究室では、このような課題に対して群集生態学や進化生態学という分野からのアプローチにより研究を進めています。システムや材料にはこだわらず、森林や河川、雪氷生態系、島嶼生態系、実験個体群を対象として、昆虫や魚類、植物、微生物などの多様な生き物を対象に研究を行なっています。最近では、生物の生態情報や遺伝情報に関するビッグデータを用いた解析も駆使しながら、生物の多様性にみられる普遍的なパターンや法則を探求しています。下に書いた研究テーマは、最近行なっている研究の一部です。

主な研究テーマ

  1. 森林林冠部の生物群集構造解析
  2. 食草選択性の進化と遺伝基盤と種の多様化
  3. 遺伝的多様性の進化とその生態的帰結
  4. 不完全な進化と生物の分布域の進化
  5. 放射性物質循環
  6. 島嶼における生物群集の形成機構

森林林冠部の生物群集構造解析

森林の林冠部は、地球上で最も高い生物多様性が観察される場所であり、そこでの膨大な多様性全体を説明することは生態学の大きなテーマと言えます。森林の三次元構造と鳥類の多様性を結びつけたMacArthur & MacArthur (1961) の先駆的な研究以降、空間的な異質性が多様性と「相関」することを検証した研究がいくつか発表されていますが、その関係をメカニスティックに説明した研究は未だ見られません。私たちは、リモートセンシングなどの情報技術、林冠クレーンといった大規模施設、国際的な林冠クレーンネットワークを活用し、森林林冠部の膨大な多様性全体を説明するモデルを構築することを目指しています。

食草選択性の進化と遺伝基盤と種の多様化

地球は緑の惑星といわれますが、その緑の植物の上には、かならずイモムシといった植食者をみつけることができます。これらの植食性昆虫の餌となる植物は何でも良いというわけではなく、それぞれの種で好き嫌いがはっきりしています。さらに、多数の植物種を利用することができる種と、ごく少数の限られた種のみを利用できる種がいます。このような植食性昆虫による餌選択がどのような機構で起こるのか、代表的な植食者である鱗翅目を主な材料として、摂食実験や遺伝子発現解析、代謝物解析(メタボローム)など、マクロ・ミクロ生物学の手法を組み合わせて研究を進めています。

遺伝的多様性の進化とその生態的帰結

種内の遺伝的多型はさまざまな分類群で見られる現象です。突然変異や遺伝子流動と負の選択のバランスの結果としてある意味では消極的に多型が保たれる場合もありますが、色彩多型のような顕著な多型は、集団内に存在する選択圧(平衡選択)により積極的に維持されるのがふつうです。当研究室では、花や昆虫を材料に色彩や行動、形態の種内多型が進化的に維持されるメカニズムを探るとともに、このような種内の多様性が直接的あるいは進化を通じて間接的に集団の人口学的動態に与える影響について、野外生物やデータベース、ゲノム情報、数理モデルなどを駆使しして研究を進めています。色彩多型を生じさせる遺伝的基盤についても調べています。

不完全な進化と生物の分布域の進化

生物は、自然選択を通じて進化することができます。そのため、分布域の辺縁の集団が、直面した新たな環境に適応しつづけることによって、分布を際限なく拡大させるポテンシャルをもっているといえます。とはいえ、実際には、どの生物種も限られた地域、あるいは環境にのみ生息しています。したがって、生物の分布を決定するメカニズムを理解するためには、分布の辺縁部でさらなる進化が抑制されるメカニズムの解明が不可欠なのです。しかし、そのようなメカニズムを野外で検証した例はほとんどありません。トンボ類や河川性のカワニナなどの生物に着目し、分布限界の成立機構を調べています

放射性物質循環

2011年に起こった福島第一原子力発電所事故により、放射性物質が大気中に放出され、その多くが地表に飛散しました。放射性物質のなかでは、比較的半減期の長い放射性セシウムがもっとも影響が大きいと考えられます。本研究室では、これまで、生物間の食う食われるの関係=食物網構造について研究を行っていました。その経験をもとに、放射性セシウムがどのように生態系の中で生物間を移動しているのか、できるだけ詳細に記述することが、われわれがやるべきことと考え、事故以来調査を続けています。

島嶼における生物群集の形成機構

ある場所に成立する局所的な生物群集の成立機構を考えるとき、その母集団として背後の「大陸」の群集を考える必要があります。これは、MacArthor & Wilsonの有名な島嶼生物地理学の平衡理論に端的に示される群集生態学の基本的な見方です。日本列島といった島に成立する生物群集は、大陸からの個体の移入そして島での種分化により形成されます。私たちは、鳥類や雪氷藻類を対象として、全球規模度での島(孤立)群集の特徴を解析することで、大陸からの分散と種分化の相互作用の生物群集形成における働きの解明を試みています。

最近の研究業績

原著論文

  1. Takahashi, Y., R. Tanaka, D. Yamamoto, S. Noriyuki, M. Kawata. (2018) Balanced genetic diversity improves population fitness. Proc. R. Soc. B, 285: 20172045.
  2. Takahashi, Y., Y. Suyama, Y. Matsuki, R. Funayama, K. Nakayama, M. Kawata (2016) Lack of genetic variation prevents adaptation at the geographic range margin in a damselfly. Molecular Ecology, 25: 4450–4460
  3. Takahashi Y., K. Takakura, M. Kawata (2016) Spatial distribution of flower color induced by interspecific sexual interaction. PLoS ONE 11: e0164381
  4. Takahashi, Y., K. Kagawa, E. I. Svensson and M. Kawata (2014) Evolution of increased phenotypic diversity enhances population performance by reducing sexual harassment in damselflies, Nature Communications, 5: 4468.
  5. Volf, M., Pyszko, P., Abe, T., Libra, M., Kotásková, N., Šigut, M., Kumar, R., Kaman, O., Butterill, P. T., Šipoš, J., Abe, H., Fukushima, H., Drozd, P., Kamata, N., Murakami, M. and Novotny, V. (2017) Phylogenetic composition of host plant communities drives plant-herbivore food web structure. Journal of Animal Ecology, 86: 556–565.
  6. Murakami, M., Ohte, N., Suzuki, T., Ishii, N., Igarashi, Y., and Tanoi, K. (2014) Biological proliferation of cesium-137 through the detrital food chain in a forest ecosystem in Japan. Scientific Reports, 4: 3599.
  7. Murakami, M. and Hirao, T. (2010) Lizard predation alters the effect of habitat area on the species richness of insect assemblages on Bahamian isles. Diversity and Distributions, 16: 952–958.
  8. Nakano, S. and Murakami, M. (2001) Reciprocal subsidies: Dynamic interdependence between terrestrial and aquatic food webs. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 98: 166-170.

書籍

  1. 高橋佑磨・片山なつ(2016)伝わるデザインの基本 増補改訂版 よい資料を作るためのレイアウトのルール.技術評論社
  2. Stephen P. Hubbell(著)/平尾聡秀・島谷健一郎・村上正志(訳)群集生態学―生物多様性学と生物地理学の統一中立理論.文一総合出版

学生へのメッセージ

本研究室では、生物の多様性の形成過程とその機能を研究しています。研究室としても、多様な人が集まり、その多様さを活かしていけるような場を作ろうと思います。