ホヤの成体器官の研究
カタユウレイボヤはゲノム/EST情報が充実しており、発生学的および分子生物学的な手法や情報が数多く利用できるモデル生物です。また、微小成体ともいえる幼若体が透明であることから、成体器官の形態や発生、遺伝子発現を3次元的に解析できます。当研究グループは、カタユウレイボヤ幼若体の大量飼育法・皮嚢の除去法・WISH法を工夫し、ホヤ成体における多検体遺伝子発現解析を行っています。また、その発現パターンの特徴から、器官の機能・構造・発生における遺伝子の関与についての理解を進めています。さらに、マボヤやオタマボヤなどを用いた成体器官研究も進めています。
新口動物の咽頭形質の進化発生学的研究
脊索動物(脊索を持つ動物群)は、尾索類ホヤ・頭索類ナメクジウオ・脊椎動物を含む動物群です。当研究グループは、脊索動物のボディープラン(体制)が、新口動物の進化の過程でどの様に成立したのかを理解しようとしています。そのために、脊索動物が共通して持つ形質の中でも咽頭器官である内柱や鰓裂に着目し、これらの器官で発現し機能する遺伝子の単離・解析を行っています。主に、半索動物ギボシムシ・尾索類ホヤ・頭索類ナメクジウオ・円口類ヤツメウナギなどから得られた研究成果と、他の動物群の知見をもとに、脊索動物のボディープランを特徴づける咽頭形質の進化理解を進めています。
消化管の進化機能形態学的研究
左右相称動物は従属栄養生物であり、”摂餌→消化→吸収→排泄”といった一連の消化システム機能的機序は、動物の系統を越えて広く共有されています。しかし、この消化システムを担う機能的構造である消化管とその付属器官の形態・機能・分子システムは、同じ門や綱の動物間でも食性や生息環境によって大きく異なります。当研究グループでは、消化管の機能・形態・発生の多様性をもたらす分子的背景を理解するため、原索動物(尾索類ホヤ、頭索類ナメクジウオ)を中心に、咽頭・胃・腸・付属器官などの機能や形態形成に関与する遺伝子群の解析を進めています。
多検体WISHシステムの開発
ホールマウント in situ ハイブリダイゼーション(WISH)法は、生体内での遺伝子発現を3次元的に視覚化できる手法として有用です。しかし、煩雑な操作が要求されたり、サンプルを失ったり壊したりしやすいため、多検体解析は困難を伴います。当研究グループは、多検体のWISH解析を簡便・迅速・安定的に行うことができるシステムとして、二重フィルタカラムと溶液の比重鎖を利用して溶液置換を行うInSituチップ法を提案しています。また、この実験操作に必要な、多検体の標識RNAプローブを簡便に作成・精製する方法も提案しています。